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泉美木蘭
2018.2.1 15:32

有効求人倍率と業種の偏り

「有効求人倍率が伸びた」と言われても、

「そうか、やっぱりな、景気がいいもんなー!」

という実感ある言葉とは結びつかないのが生活者の感覚だと思う。
離婚して地元に戻った友人(30代半ば女子)は、3カ月近く仕事
が決まらず困っていて、
本当は正社員で長く勤められる安定した職場を求めていたけど、
仕方がないから非正規の契約で…と条件を下げて、探すことに
したようだ。
非正規は、急に契約を切られた経験があるから嫌なんだと最初は
言っていたけど、思ったように決まらないから仕方ないわ、と。

総務省の労働力調査を見てみたら、産業者別の就業者状況が目に
とまった。
(最新のものがまだ出てなかったので2017年公表のだけど)




※横に長いので途中で切って、整形して二段にした

2008年リーマンショックの強力な影響を受けて以降は、自動的に
回復傾向が最近までつづいているけど、
やっぱり煽りを受けやすかった建設業や製造業の就業者数は減って
いるし、人手不足なのが如実に見えてくる。

運輸・郵便業は、2017年のデータがあれば増加してるかもしれない
が、ネットショッピングやネットフリマなどが一般化しすぎて、
あまりに人手不足で、配達の人がほうほうのていという
状態だ。
これはデータ以前に、体験からわかること。

それから、医療・福祉。ここに異様に就業者の増加が偏っているのが、
気になる。対前年増減が、飛びぬけてプラスになりつづけてるのは
この1業種だけだ。
医療・福祉とあるが、これは実質「介護」のことだ。

手元の社保審の介護関連の資料によると、
介護施設の有効求人倍率は、全体平均の2倍以上。非正規率は40%。
訪問介護になると、非正規率が77%、そして就労者の3割以上は、
60代だ。



それでもまだまだ足りず、2020年には20万人が不足するので、
政府としても予算をつけてなんとか確保せねば、という状態で、
あれこれ役人が考えた数字が並んでいる。

少子高齢化と長寿社会の実現によって、否応なく介護業界の需要が
増えており、そこに就業者が流れ込んでいく。
しかし、介護の仕事はきつくて、待遇も良いとは言えず、離職率も
高い。結果として常に膨大な求人がかけられている。

机上の計算式だけでなく、こういった社会の実態も考慮して
データを見なければ。
有効求人倍率アップ→だから好景気でアベノミクス成功! とは
結論づけられないだろう。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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